パティシエ ニシカワケンジの
「ショコラ ダムール」
「8ミリ」が生む風味が最高潮
兵庫県神戸市須磨区にあるフレンチレストラン「フォレ・ド・リキゥ」の代表、西川健司さん(29)はデザートを担当するパティシエでもある。小学生の頃からパティシエになろうと決めていたが、中学2年の職場体験で洋菓子店に行き、確信を得た。
「このお菓子はこんな材料でこんな道具でこうやって作るんだ! 全てが驚きでした」
高校卒業後、製菓学校で技術を学び、イギリス人オーナーシェフの感性にあこがれていた大阪市中央区の「ブロードハースト」に就職。店内はポップで遊び心あふれる世界が展開されていたが、仕事を始めてからも驚きの連続だった。
「仕事はチームワーク、楽しみがなければ、喜んでももらえない」。故郷の母の味を再現するシェフは、お菓子作りを家庭の手作りのごとく感覚で覚えるよう弟子たちを指導していた。お菓子作りは、技術だけではなく、作り手の感性や個性に大きく委ねられることを知った。
7年前、独立して自らのブランドを立ち上げた。フランス料理店を拠点に皿盛りデザート、テークアウト、通信販売を中心に展開中だ。「最初にロゴを作り、それからお菓子を作りました」。この発想こそが彼の原点で、自己のブランドイメージにピッタリ合うようなチョコレート菓子を完成させた。
「ショコラダムール」はチョコレート、バター、砂糖、卵に粉を合わせて低温で加熱したのち、型に流して焼いたもの。ねっちりと凝縮感のある生地は、生チョコレートのように素早く溶けず、ゆっくりチョコレートの風味を味わうことができる。
「よく冷やし、約8ミリにスライスしてお召し上がりください」と、添えられたしおりには目盛りが刻まれている。体温とお菓子の温度に差があればあるほどお菓子の油脂がゆっくりと溶けるため、長い間楽しむことができるが、長すぎると風味が最高潮に達する前にのどへ落ちてしまう。最も心地よい歯応えと、一口で入るお菓子とそれを広げる口中の空間を計算し尽くした数字なのだ。
開発以来、いろいろな人の意見を参考に改良を重ねてきた。チョコレートの濃さを出すためにブレンドしたり、甘さの調整をしたり…。しかし一番の意見者は自分だという。
「このお菓子を一番よく食べているのは私ですから」。自身のリアルタイムの感性が8ミリに込められたお菓子である。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
<もうひとこと>
「ショコラ ダムール-抹茶-」はホワイトチョコベースの濃い茶をイメージした濃厚な味わいです。
パティシエ ニシカワケンジ
【住 所】神戸市須磨区多井畑字若林9の7
【電 話】078・743・0015
【営 業】午前11時半~午後8時半(午後3時半~5時半は休み、火曜定休、祝日なら翌水曜定休)
【最寄り駅】JR須磨駅