【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.3.31朝刊)

青木松風庵の「月化粧」
=重厚な洋素材 白餡で調和=

増加するアジアからの観光客に喜ばれるお菓子として、関西国際空港会社の要望を受けて青木松風庵(本社・田尻町)が開発した和菓子が「月化粧」だ。
「餡(あん)も生地も、私が開発したレシピです」と社長の青木啓一さん(59)。餡だけでもこれまでに百数十種類の開発を手がけてきたという。
土産物として販売する都合上、「日持ち」がしなくてはならない。日持ちのする餡は硬くなりがちだが、少量の油脂を含むことで軟らかさを保持できるそうだ。こうして誕生した「月化粧」は、土産菓子に食味と保存性を両立させるという“革命”を起こした。
当初は外国人をターゲットとした和菓子だったが、思いがけず地元の若年層を中心に好評を得て、空港のみならず、今や同社全店で販売されるヒット商品となった。
色 よく焼き上がった饅頭(まんじゅう)の皮の中には、インゲン豆の白餡に練乳と蜂蜜、さらにバターが練り込まれた、とろみのある餡がぎっしり詰まっている。 それが香ばしい皮と一緒になると、シロップがたっぷりしみ込んだホットケーキを思い起こさせる。練乳の優しい甘味がバターのコクと重なり、口の中でとろけ 出す。予想を裏切るしっとり円(まろ)やかな舌触りも、従来の饅頭ファンとは違う層に受けているのだろう。
普段から料理の腕もふるうという青木 さんは「不要なものを限りなくそぎ落として素材の良さを最大限に引き出す『和食』、素材同士の組み合わせで新たなおいしさを作り出す『洋食』の、それぞれ の精神は菓子作りにも通じる」と語る。バター+練乳+粉乳の重厚になりがちな洋素材の組み合わせを、すっきりとした白餡で調和させた。長年の経験から編み 出した“和魂洋才”の「みるく饅頭」だ。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
【もうひとこと】
練乳が入った餡は甘さ控えめ。バターを重く感じさせない、ベストバランスです。【住  所】阪南市鳥取425の1
【電  話】072・472・2007
【営  業】午前9時-午後7時半(元日のみ定休)
【最寄り駅】南海本線鳥取ノ荘駅

産経関西 スイーツ物語 2012.3.31
msn産経ニュース 2012.4.21.10:00