【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.7.21朝刊)

ル・ピノーの「大阪・堀江ジェラート」

4種の贅沢 カップに詰め

近年最もおしゃれな街のひとつとして注目を集める北堀江。街のランドマークとなっている洋菓子店「ル・ピノー」はこの地で創業した。社長の阿部雅祥さん(48)は、大阪をこよなく愛する生粋の堀江人だ。阿部さんが父から店を引き継いで23年になるが、以前は広告代理店に勤めていたという異色の経歴の持ち主。顧客目線を持ち続けながら商品や店舗をプロデュースし、今や大阪の名店のひとつに数えられるようになった。

昨年、阿部さんは大好きなジェラートを店のアイテムに加えた。「いつかはチャレンジしたかった」と、満を持しての商品開発だったという。コンセプトは「パティスリー(ケーキ店)が作るケーキのようなジェラート」。

フルーツやチーズ、ショコラなどジェラートの構成要素となるフレーバー(味)を、生ケーキなどに使用する高価なお菓子の材料で作った。「チョコレートもピスタチオも、素材は全て最高級」と阿部さん。国産イチゴのあまおうや、沖縄・宮古島のパッションフルーツを自社でピューレにして使用している。

さらに、フランスのバローナ社の最高級クーベルチュールチョコレートは生チョコとして販売されているもの。素材の旨(うま)みがパティシエの技術によって、最大に引き出された瞬間をジェラートにした。

店頭販売を始めたところ勢いよく売れた。しかし、阿部さんが想像もつかないフレーバーの組み合わせで若い女性客らが注文する姿を見て、「それならパティスリーお勧めの完成されたスイーツを」と、カップジェラートの商品化に乗り出した。フレーバーの組み合わせや分量の比率などを試行錯誤した末、「あまおう苺(いちご)レアチーズ」「ピスタチオメープルミルク」「マンゴーココナッツ」「プレミアムショコラ」の4種のカップジェラートが誕生した。

冷たいジェラートは口の中で溶けながら徐々に温度が上昇するため、それぞれの素材が香り高くなる瞬間を無意識に味わうことができる。これぞジェラートの醍醐味(だいごみ)だ。

「いつまでもこの街を愛し、街の人々に愛される店でありたいと願っている」と語る阿部さん。最高級の素材をふんだんに使用し、さらにパティシエの長い経験と高い技術を余すことなく練り込んだこの贅沢(ぜいたく)なジェラートは、大阪人好みの豪奢(ごうしゃ)な味わい。おしゃれな街の演出効果も伴って、堀江の街に浸透していくことだろう。

 

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

【もうひとこと】
筆者のお気に入りは「あまおう苺レアチーズ」。チーズのコクとイチゴの酸味がダイレクトに感じ取れ、爽やかな感動を覚えます。

【住  所】大阪市西区北堀江2の4の12
【電  話】0120・24・9014
【営  業】午前9時~午後9時
【最寄り駅】大阪市営地下鉄西大橋駅、四ツ橋駅

産経関西 スイーツ物語 2012.7.23
msn産経ニュース 2012.7.21.9:00