シンフォニーナガノの「十二間(じゅうにけん)かすてら」
こだわりが奏でる上質のコク
神戸岡本に、シェフが指揮者となり、タクトのかわりにパレットナイフを持ち、スタッフをオーケストラに見立てて交響曲を奏でる店がある。シンフォニーナガノ。名付け親はオーナーシェフ長野修司さん(49)の師匠、ムッシュマキノ(大阪府豊中市)の牧野真一さんだ。
グランドピアノの看板をはじめ外観や内部のディスプレー、パッケージ、お菓子そのものにも音符や楽器がちりばめられている。それに加え、大勢のパティシエが店内を忙しそうに動き回る姿は、楽譜のおたまじゃくしが弾むように楽しく映る。
岡本は長野さんが心から愛する街だ。「商売より何よりここに住みたかったんです。おいしいお菓子を作り、街の皆様に喜んでいただきたい…」。シンフォニーナガノは今年13周年を迎えた。シュークリームはこの店、チーズケーキならあの店…と、お菓子の種類で店を使い分けることができる街、岡本。舌の肥えた住人に選んでもらえるように、ショーケースには30~40種類ものバリエーション豊かなお菓子が並ぶ。
「十二間かすてら」は、8年前のリニューアルオープンにあわせて発売した商品。老若男女に食べてもらえるように、カステラを選んだ。従来、カステラは一本売りだったが、一切れずつ個包装にして販売した。「一本だと、一度に食べ切れなかった時に、保存状態によっては乾燥して風味や味が落ちてしまう…」。一口大の焼き菓子類もできるだけ小分けして包装するのが長野さんのポリシーだ。それによりお菓子の風味や鮮度を保ち、常にできたてのおいしさを味わえるようにしている。
カステラの味は卵で決まるとされている。十二間かすてらには平飼い卵のコクに加え、ハチミツの渋みが味に深みを与えている。米飴の糀(こうじ)の香りがクセになる。しっかりとした歯応えは、長野さんが毎日仕込む生地に含まれる気泡の力だ。カステラ作りで最も重要とされる工程、生地の気泡をヘラで整える「泡切り」を3度も繰り返す。このこだわりが、カステラとして焼きあがったときにしっかりと膨らみ、気泡が均一化された心地よい食感を生み出す。しっとりとした食感をかみしめると、次第に糀の風味が広がり、卵特有のにおいだけを封じ込め、上質なコクが一層引き立つのである。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「十二間かすてら」6個入り1500円、9個入り2180円
【もうひとこと】東灘区のスイーツ店密集エリアをバスで巡る「ひがしなだスイーツめぐり」が24日までの土曜、日曜に運行されています。詳しくは神戸市総合コールセンター電話078・333・3330
■シンフォニーナガノ本店
【住 所】神戸市東灘区田中町3の18の22
【電 話】078・413・0026
【営 業】午前10時~午後8時半(不定休)
【最寄り駅】JR摂津本山駅