ナチュールシロモトの「シュトーレン」
一生に一度の味
ここ数年、日本でもクリスマスの顔として定着してきた「シュトーレン」。もともとはドイツ菓子で、11月下旬に仕込み、クリスマスまでの間、少しずつスライスして味の変化を楽しみながら食べる習慣がある。店や家庭によって具材の種類や量が違うため、それが「お袋の味」的なオリジナルの味となる。
ナチュールシロモトのオーナーシェフ、城本智和さん(52)は10年ほど前からクリスマス商品にシュトーレンを加えた。城本さんのお菓子づくりは料理感覚。自分の舌を信じて仕上がりの味のイメージを目指し、調理するがごとくお菓子を作り上げる。その商品開発の姿勢には妥協がない。
「肉類は食べません。食事は薄味」と城本さん。スイーツも軽くて薄味が人気の秘訣(ひけつ)だ。店名のナチュール(フランス語で「自然」の意味)のように「人もケーキも自然体で…」がコンセプト。素材の持つ自然なうまみを、お菓子というフィールド一杯に表現することが最大のミッションなのだ。
シュトーレンの配合は毎年変える。「年を追うごとに味を絞り込み、おいしくなってきました」。ヨーロッパでの修業時代に覚えたレシピや味の記憶を元に、前年のお客さんの評価も加味し、味に磨きをかけている。
薄力粉と強力粉を半々にブレンドした生地に生イーストを入れて発酵させ、マジパンやバター、砂糖などを練り込む。そこにイチジク、洋ナシ、アプリコット、マスカットをはじめ3種類のレーズンなどのドライフルーツや、クルミ、アーモンドなどのナッツがたっぷりと入る。
ドライフルーツをかんだ時に広がる香りが、たわわな果実を連想させる。ナッツの香ばしさは、生地を焼き上げた後に漬けられる焦がしバターの風味によって一層際立つ。
たっぷりと白い粉糖の衣をまとった独特な姿は“おくるみ”に包まれた幼いキリストをかたどったともいわれている。保存性を高めるためのものだが、薄切りにするので“おくるみ”のしっかりとした甘さも、シンプルなお菓子に程よいアクセントを付与している。
日を追うごとに、周囲のバターや中身のドライフルーツやナッツの油分や果汁などの水分が生地に浸透し、具材と生地が一体化するのを楽しめる。今日の一枚に二度と出合えない味は、まさに一期一会のクリスマススイーツである。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「シュトーレン」大2100円、小525円
【もうひとこと】小さなサイズも大人気。クリスマスケーキと一緒にパーティーを盛り上げてくれるスイーツです。
ナチュールシロモト欽明台店
【住 所】京都府八幡市欽明台北4
【電 話】電話075・971・3300
【営 業】午前10時~午後7時(不定休)
【最寄り駅】JR片町線松井山手駅