ルージュフォンセの「刃物セット」
甘~い切れ味?
「こんなん見たことないでしょ?」。自信たっぷりに語るのは、ルージュフォンセ(兵庫県小野市)のオーナーシェフ、住本和之さん(45)。小野市がある播州地方は江戸時代から金物や刃物の産地として知られ、播州刃物は今もこの地の特産物である。ぷっくり膨れたはさみ、かわいい形にデフォルメされた鎌、迫力のある包丁がセットになっている。
住本さんは神戸のホテルで修業した後、生まれ故郷の小野市で平成13年に店を開いた。素材本来の味を最大限に引き出すシンプルなお菓子作りを心掛けている。
昔の学校の教室をイメージした店内には、地元産の小麦粉やフルーツを使ったケーキや焼き菓子がズラリと並ぶ。「播シュー(シュークリーム)」「小野ちーず(小野市の地図が描かれたチーズケーキ)」「そろばんマドレーヌ(そろばんの玉に見立てたマドレーヌ)」など、発想力豊かな住本さんの手にかかれば、楽しいネーミングのお菓子が続々と誕生するのだ。
そんな住本さんが昨年作ったのがこの刃物セット。同店の人気商品のミルフィーユのパイ生地をはさみの形に抜いてしっかりと焼き上げる。油引きされた直後の刃物の光沢を思わせる艶やかな表面は、カリッと焼きあがり、幾重にも折られたパイ生地がサクッと心地よい歯ざわりだ。鎌と包丁のサブレには小野市産の小麦粉「ふくほの香」を使用し、地産地消を推進する同市の事業モデルになっている。
クシュクシュッと、ふた口ほどで食べてしまえるサイズのはさみだが、想像以上のサックリとした食感が目にも楽しいお菓子をおいしい記憶に変える。サブレのサクサクとした歯ざわりは小麦の味をしっかりと伝え、かみしめればかみしめるほどジビエのごとく血が沸き立つような土の香りを感じるのだ。
住本さんの街を愛し、お菓子を愛する姿は、地元の人々に受け入れられている。「そろばんマドレーヌ」は地元の高校生とのコラボレート商品で、兵庫県などが地元産品の良さをアピールするため設けている「五つ星ひょうご」にも選定された。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
<もうひとこと>
住本さんから新しいお菓子が完成したというお電話をいただくと、いつも心が躍ります。
ルージュフォンセ
【住 所】兵庫県小野市黒川町1829
【電 話】(電)0794・62・8858
【営 業】午前9時半~午後7時(不定休)
【最寄り駅】神戸電鉄小野駅