やながわの
「丹波伝心 和のモンブラン」
秘密が作る味のライブ感
「丹波伝心 和のモンブラン」は日の丸弁当をモチーフに、折り箱に納められたモンブランだ。しっとりと焼き上がったスポンジの上にカスタードクリームと生クリームを重ね、その上にたっぷりと丹波グリのそぼろを一面に敷き詰めている。中央には大きな丹波グリの渋皮煮を配し、まるでご飯に梅干しをギュッと埋め込んだかのようにみえる。
やながわは創業123年。元々は丹波産の農産物を取り扱う会社だったが、4代目社長の柳川拓三さん(59)は「とれたての新鮮な素材の味わいを一人でも多くの方に伝えたい」と栗や黒豆などの農産物加工から和洋菓子の製造・販売までを一貫して行う事業へと拡大した。「丹波は原料を供給していて加工業が少ないため、地域の雇用創出や経済の活性化の一助となるもくろみもありました」と語る。
モンブランは通常、栗のペーストに生クリームを練り込んだ栗クリームを搾って成形する。ところが、このモンブランは栗のペーストをそぼろ状にしたものを使用する。栗本来の風味を最大限に感じることができるように配慮されているのだ。さらに砂糖を控えめにし、栗そのものの甘味が生かされている。
この栗のペーストには秘密がある。栗は収穫するとたちまち風味が落ちるため、収穫の翌日には加工されるのだ。現地でその時にしか味わえない最高の状態を冷凍保存する。「そこに行かなければ味わえないライブ感を味わっていただきたい」。和の心を伝えるために柳川さんがイメージしたのは、大きな皿に盛り付けられたおかずを分け合って食べる日本の食卓風景だ。丹波の味と香りがぎっしり詰まった箱入りのモンブランを分け合う間に会話が弾み、おいしい記憶が共有されるのだろう。
付属の木ベラで少しずつ切り分け、スポンジとクリームと栗そぼろを同時に口に含む。鼻腔に抜ける栗の香ばしさを追いかけて、優しい甘さがクリームのコクと混然と口中を満たす。ナッツ類の中で栗は例外的に脂肪分が少ない。それゆえにクリームと相互に補完し、一層味わいを鮮明にするのだ。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
<もうひとこと>
おいしくて思わず独り占めしたくなりますが、大切な人と分け合ってお召し上りくださいね。
夢の里 やながわ
【住 所】兵庫県丹波市春日町野上野920
【電 話】0795・74・0123
【営 業】午前10時~午後6時(元日と毎週木曜定休)
【最寄り駅】JR福知山線黒井駅
msn産経ニュース 2014.3.15 10:00
産経関西 スイーツ物語 2014.3.15 12:48