明月庵本舗の「ら・かすた 神戸もなか」
和洋折衷を越えた妙味
イチゴやブドウなどのフルーツの入った大福がはやっているが、「ら・かすた」にはカスタードクリームが入っている。明月庵本舗は神戸・板宿にある創業68年の老舗和菓子店。上生菓子、焼き菓子、朝生菓子と呼ばれるおはぎやだんごなど、約30種類の和菓子が並ぶ。「ら・かすた」は、シュークリームが大好きで、クリームが入った和洋折衷のお菓子を作ろうと、社長の佐野幸弘さん(46)が2年がかりで開発した看板商品だ。
お餅は中のクリームの柔らかさに合うように、ふわっとした食感。雪平(せっぺい)と呼ばれる卵白を加えた生地をベースに、和洋の垣根を超えてさまざまな手法を取り入れた。クリームも、米に由来する餅に合うよう甘さや脂肪分を抑えた。こうした試行錯誤で味や食感に一体感が生まれ、単なる和洋折衷ではないオリジナルのお菓子が完成した。
「ある日、手土産を探しておられた親子連れが試しに2個買って行かれ、すぐに戻ってきて20個買ってくださったことがありました。食べ物商売とはこういうことだ!と実感しました」と佐野さん。そのうれしい感覚を脳裏に焼き付け、アイデアの原動力としている。
ひんやりとした舌触りを楽しんでいると、なめらかなクリームがしっくりとお餅になじむ。かむほどに広がるお餅の香ばしさを、ミルクやバニラの香りが引き立てるのだ。一般的な大福のサイズにするとクリームが多すぎ、食べたときに重くなってしまうが、直径約5センチと小さめにすることで満足度と食味の絶妙のバランスがとれている。
斬新なアイデアと、冷凍で取り寄せることができる商品として人気を集め、神戸セレクションにも認定された。チョコレート味や抹茶味のバリエーションも加わり、「開発から10年。昔ながらの商品に並ぶもう一つの柱として成長しました」と佐野さんは語る。
昨年、まかないのおやつとして、ほんの遊び心からモナカの皮に「ら・かすた」をはさんでみた。香ばしく食感の良いモナカの皮との意外な組み合わせにより、おいしさがさらに広がった。すぐに、通常よりあっさり味のクリームに合うモナカの皮を探し求め、商品化が実現。パリッとしたモナカの皮の食感を大切にするため、2枚ずつ個包装を施し別添えにした。食べる直前にサンドすると、パリッ、ふわっ、とろ~っと食感の変化を存分に楽しめる。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
<もうひとこと>
私のオススメ“ひんやり和スイーツ”の定番です。
明月庵本舗
【住 所】神戸市須磨区飛松町2の4の4
【電 話】078・732・0667
【営 業】午前9時~午後6時半(不定休)
【最寄り駅】山陽電鉄・神戸市営地下鉄板宿駅
msn産経ニュース 2014.3.22 10:00
産経関西 スイーツ物語 2014.3.23 1:00