パティスリードパリ アトレビアントの「アトレビアント」
「チーズよりチーズらしい」ケーキ
パティスリードパリアトレビアント(神戸市西区)のオーナーシェフ、中尾誠一さん(40)は菓子メーカーに勤務する傍ら、兵庫県洋菓子技術専門校に学んだ。飴細工やマジパン細工など、これまで経験のない技術について各社からの精鋭技術者たちと共に学び、帰宅後も練習に没頭した。
「もっとお菓子のことを勉強したい」。訓練校を卒業すると、パリの有名デパート、ボン・マルシェでパティシエとして1年間、従事した。店の特徴は、販売する商品用の素材を1階の食料品売り場から自由に調達できることだ。
平成24年春、念願の自店をオープンさせた。その名に「パリのお菓子屋さん」と付記した。真っ赤な外観に加え、中に入るとエッフェル塔などのディスプレーやシャンデリア、家具に至るまで、まさにリトルパリだ。
アトレビアントは、クッキーを砕いたサクサクのクランブルの上に、ベイクドチーズケーキとレアチーズケーキがのった三層構造のチーズケーキだ。
ポイントは何といってもレアチーズケーキ。通常使われる舌触りのなめらかさを増すゼラチンや、酸味を与えるワインを一切使用せず、牛乳と砂糖、チーズ、生クリームのみのシンプルな構成だ。
「重要なのはチーズそのものを食べてもらうこと」と中尾さん。ゼラチン特有のにおいやワインのツンとくる刺激を除外し、チーズよりチーズらしいチーズケーキが誕生した。
レアチーズはクリームチーズそのものの味わいだが、はるかに軽やかだ。ベイクドチーズの塩味は絶妙。ホイップチーズのうまみだけを残し、淡雪のように溶けていく。
このケーキは21年、大阪府洋菓子協会のクリスマスコンテストで優勝した作品を、販売できる形で再現したものだ。季節を問わず定番の看板商品としてショーケースのベースに据えている。
緑豊かな神戸市西区は住宅地に隣接する農地も多数あり、地元で取れた果物や野菜を積極的に使用するシェフも多い。中尾さんも、その一人だ。
ボン・マルシェで勤務した経験を生かし、地元で取れた食材を自在にスイーツに使用。白いキャンバスのようなチーズケーキに、色とりどりのフルーツが際立ってみえる。夢いっぱいのスイーツを、店いっぱいに描き続けてほしい。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
《もうひとこと》カットケーキ4個分のホールはちょっとお得です。
パティスリードパリ アトレビアント
【住 所】神戸市西区前開町2の12の15
【電 話】078・939・2511
【営 業】午前10時~午後7時(毎週月曜と第三火曜は定休)
【最寄り駅】神戸市営地下鉄伊川谷駅