ジャンティーユ「かりんとシュー」
自然乾燥で独特のカリカリ感
「かりんとシュー」は日本の伝統菓子かりんとうと洋菓子のシュークリームを合わせたものだが、そもそもベースになるシュークリームの語源も、フランス語のシューと英語のクリームを合わせた和製造語だ。シュークリームの皮が残った時の再利用法として考案された。
ジャンティーユ(兵庫県西宮市)のオーナーシェフ、末広靖通さん(45)は宝塚ホテルで20年の経験を積んだ後、新阪急ホテル、さらに宝塚ホテル時代の師匠である三輪青丹シェフの店で修業を重ね、平成23年7月に自店を構えた。
店内は、ショーケースのすぐ後ろからシェフが顔をのぞかせて、客の様子がすぐ分かるようなレイアウトになっている。客は、併設されたキッチンのオーブン内で焼きあがるお菓子のいい香りをはじめ、ホイッパーやミキサーで生クリームを立てる音などを五感で感じることができる。
シュー皮を自家製黒蜜にくぐらせ、皮に浸透させたのち、窯でしばらく焼く。電源を切り、そのまま朝まで自然乾燥させると完成だ。この乾燥具合が重要。乾燥が浅いと独特のカリカリの食感が得られない。
ザクッとしたかみごたえは、シュー皮の軽さに比べると、ややしっかりとしていて、かりんとうの表面をかみ砕くときのような感覚だ。中のクリームは、通常のシュークリームにはカスタードクリームのみを入れるが、かりんとシューには生クリームとのダブルクリーム構造になっている。
この生クリームが特徴的だ。ホテル時代に覚えたホイップ方法で、クリームに含まれる空気の量が非常に多く、なめらかで口溶けが早い。シュー皮がかりんとう風に黒糖味に仕上っているため、重くならないように生クリームを加え、あっさりと仕上げた。
シュー皮の味の予測が、一口目から外される。ほろ苦い黒糖カラメルの味と風味の記憶の糸をたどると、懐かしいかりんとうの後味がよみがえる。末広さんはホテル時代から当時の料理長の「印象に残る味より、記憶に残る味を意識せよ」を座右の銘としていた。
かみしめるほどに広がる黒糖の苦味に、助け舟を出すカスタードの味。シュー皮に含まれる塩分が塩キャラメル味の余韻となってエピローグへ。
「流行に左右されないお菓子をいつまでも作っていきたい…」と末広さん。目先の目新しさを追求した結果ではない、作り手の人格があらわれたお菓子だ。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
《もうひとこと》かりんとシューは土・日曜限定で販売しています。予約すれば、平日でも対応してもらえます。
パティスリー ジャンティーユ
【住 所】兵庫県西宮市樋ノ口町2の2の5
【電 話】0798・77・2171
【営 業】午前10時~午後7時(火曜定休)
【最寄り駅】阪急今津線門戸厄神駅
2014.5.31