【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2014.8.31朝刊)

「とら吉クリームサンド」は1個140円(税込み)

「とら吉クリームサンド」は1個140円(税込み)

SHOGETSUの「とら吉クリームサンド」

大阪の心をつかんだ縁起もん

大阪城の天守閣の伏虎や、道修町の薬の神様「神農さん」の張り子の虎など、大阪は虎に縁がある街だ。「この縁をお菓子にして、大阪に根付き、大阪の人々に喜ばれ、他の地方の方に大阪を知っていただけるようにしたい」。「とら吉クリームサンド」を生み出した大阪市福島区の「SHOGETSU」の藤原厚子さんは語る。

大阪生まれ・大阪育ちの藤原さんは、昭和28年創業の和菓子店「御菓子司 浪速育 松月」(大阪市北区中津)の2代目、藤原勝廣さん(65)に嫁ぎ、和菓子の世界に入った。「当時は女性の意見がなかなか取り入れられない時代だったので、お菓子のアイデアを出しても、なかなか聞き入れてもらえませんでした」と振り返る。

そこで自ら菓子職人になろうと、独学で和菓子、洋菓子を学んだ。さらに和菓子の研究組織「大阪二六会」や、大阪府洋菓子協会に併設されている府洋菓子技術専門校で大阪屈指の職人の指導を受けた。

平成12年、福島区に洋菓子の店を構えたが、和菓子を忘れたわけではない。「あんこ離れ」に象徴される若い世代の和菓子離れに歯止めをかけようと、女性ならではの感性で食感や香りなど繊細な和菓子の技法や味を巧みに洋菓子に取り入れ、販売した。

とら吉クリームサンドは、最中の皮にきな粉クリーム、胡麻クリームをサンドした和洋折衷のお菓子だ。100%もち米の皮は香ばしく、サクサクの食感が心地よい。クリームは皮のサクサク感を失わないギリギリの柔らかさに調整。時間が経っても極めて軽い食感を保っている。

最中の皮のデザインは厚子さんが手掛けた。「張り子の虎を参考に、可愛いデザインにしました。縁起をかつぐ大阪人に喜んでいただけるように『吉』の文字を入れました」。大きさも女性が二口で食べられるサイズにこだわり、型は完全オリジナル。「最中ではない最中を作りたかった」。

餡(あん)より水分量の少ないクリームをサンドすることで、最中の皮が水分をすって上あごにくっつく心配もない。米とクリームの味わいは、例えるならイタリア料理のラザニアのようだ。米の香ばしさが少量の油脂で、より広がる。

平成19年に開発したところ、洋菓子感覚が受け、販売と同時にヒット商品に。今ではギフト商品の主軸となっている。今年、府から「大阪産名品」の認定を受けた。日本の伝統や文化を伝える和菓子に負けず劣らず、大阪の虎との縁を次世代につなぐ〝語り部〟のお菓子にきっとなる。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

《もうひとこと》虎柄生地の「トラ焼き」は、カスタード味もある洋菓子風のどら焼き。まさに大阪産(もん)の名品です。

SHOGETSU(福島店)
【住  所】大阪市福島区福島5の10の23
【電  話】06・6458・8015
【営  業】午前9時~午後8時(日曜定休)
【最寄り駅】JR環状線、阪神福島駅、JR東西線新福島駅

2014.8.31

msn産経ニュース

産経関西 スイーツ物語 2014.8.31