ル・ハルミツの「焼きドーナツマーブル」
普通を極めた特別な味
本格派パティスリーの焼きドーナツは生地が違う。焼きドーナツは通常、油で揚げず生地にバターを配合して香ばしくオーブンで焼き上げるが、生地が重くなり、ずっしりとした食べごたえになりがちだ。それを焼き上げのテクニックで軽めに仕上げにしたのがル・ハルミツの「焼きドーナツマーブル」だ。
オーナーシェフの中井文明さん(42)は、兵庫県西宮市の人気店ケーキハウスツマガリで15年勤務した後、平成24年4月に独立して自店を構えた。「ツマガリでの最初の5年間は、毎日ミキサーの前で生地を作っていました」と振り返る。
焼きドーナツマーブルの生地は、中井さんがツマガリで仕込んでいた人気商品「マーブル」と同じだ。焼き菓子の生地をしっとりと仕上げるため、通常は水あめを使うが、その代わりに牛乳の量を多めに配合しているのが特徴だ。
しかし、牛乳を多く入れると他の材料と合わせる時に分離することもある。生地をなじませる技術には、ツマガリでの長い経験が生かされている。
チョコレート生地をつくり、白い生地と合わせる。2つの生地を完全に混ぜると1色になってしまうので、そのままそっと絞り袋に入れて絞ると、ちょうどいいマーブル状になる。
ドーナツを割ると、きれいなマーブル柄が現れる。甘さを控えた生地はふわっと空気を含み、歯触りはきわめて軽い食感だが、しっとりと舌になじむ。チョコレート味が出たり入ったりと変化に富む。さらに表面に塗られたスイートとホワイトの2色のチョコレートが、パリッとした食感や、チョコレート独特の甘味を生み、香りに濃淡をつけている。
中井さんが修業したツマガリは、職人の間でも「よほどの菓子好きでないと務まらない…」とされる名店だ。オーナーシェフの情熱に惹かれ、熱血職人たちが集まってくる。中井さんは焼き菓子部門の各工程を数年ずつかけて、すべて経験したという。
「高級な材料を使えば、おいしくなるとは限りません。食べてみて、普通においしく感じる素材を選びます」と中井さん。その手にかかれば、普通の素材で作られた普通のお菓子こそ、どこにもない特別なものだと分かる。
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前回紹介した「パティスリー プリュスプリュス」の最寄り駅は、「JR高野線帝塚山駅」ではなく「南海高野線帝塚山駅」でした。訂正します。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
<もうひとこと>
ふくろうのトレードマークがかわいいハルミツロールも人気です。
ル・ハルミツ
【住 所】神戸市西区竜が岡2の17の5
【電 話】078・967・6160
【営 業】午前10時~午後7時(水曜定休)
【最寄り駅】JR大久保駅
msn産経ニュース 2014.10.25
産経関西 スイーツ物語 2014.10.25
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