ケンテルの「ブランデーケーキ(チョコ)」
=甘くてほろ苦い定番商品=
世の中に「ブランデーケーキ」と名のつくものはあまたあれど、チョコレートがかかったものは珍しい、という。
ブランデーケーキは通常、焼きたてにシロップ をかける。しかし、このケーキは、生地を休ませ、熱を取ってからチョコにどっぷりと浸し、その上からブランデーシロップをかける。
「一番難しいのは生地の状態をみてシロップをかけるタイミングと分量」と、オーナーシェフの山下謙二郎さん(72)。
昭和54年からこのケーキを作り始めたが、当時流行しつつあったブランデーケーキを何とかヒットさせたい一心で「他店にはない工夫を」と試行錯誤を重ねた 結果がこの形。最初は「生地がベトベトする」と苦情が出るほどだったが、いつしかリピート客が増え、定番商品の座を得た。
ブランデーケーキ(チョコ)は1本1050円
時を経て、材料や好みの変化とともに、ブランデーケーキも進化してきた。とくにチョコの品質にはこだわった。現在は有名ブランド「カルボー」の高級品を使 用。チョコがしっかりとしみ込んだ生地を口にすると、熟したブドウにも似たブランデーの香気と心地よいカカオの焙煎(ばいせん)香が押し寄せ、甘くてほろ 苦い余韻がいつまでも残る。
フレッシュバターをふんだんに使った生地は、チョコとシロップを受け止め、その水分が食感を損なうことはない。今風の“フワフワ”ではない、ほどよい歯応えに仕上がるのだ。
「今は高齢化社会。“お子様向け”のお菓子とは一線を画した、値打ちの分かる大人もうひとことのお菓子を積極的に作っていきたい」。ブランデーケーキだけでなく、山下さん自身も時代とともに進化を続けている。
(文と写真 「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
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