アミエルの「酒かすマドレーヌ」
「父の日」にぴったり のスイーツがある!
「アミエル」に昨年登場した、地酒の酒かすを使ったマドレーヌだ。オーナーパティシエの大川原和弘さん(43)は大阪の老舗洋菓子店 で18年修業し、フランスやドイツでの研修経験を持ち、全国級の技術大会でも優勝したことのある実力派だ。
交野に店を開いて4年。フランスのちょっと田舎風にアレンジされた店内に、アンティークの家具や菓子に関連する道具などとともに、焼き菓子やギフトラッピングの商品が所狭しとディスプレーされている。お菓子好きにはたまらない「夢の空間」だ。
そんな店の入り口付近 で、ひときわ目を引くのがこの酒瓶。地元の酒蔵「山野酒造」の片野桜(かたのさくら)の純米大吟醸「雫(しずく)」は、酒を搾るときに醪(もろみ)を酒袋 に入れて圧力を加えず、つるしてしたたる雫だけを瓶詰にしたもの。その「酒かす」は酒分を多く含み、とろとろの状態のままである。 大川原さんは知人からこの酒かすの評判を聞き、まずは「フランス菓子の基本」とされるマドレーヌの生地に混ぜて焼いてみた。
ずっしりと重そうに見える酒かすをマドレーヌの生地に合わせると、ふくらみが悪いのではないか-と心配した。しかし、国産の小麦粉をしっかり混ぜ合わせると粘り強い生地となり、しっかりふくらんでなめらかな食感が生まれた。
オーブンから取り出し、焼き上がったマドレーヌに酒を吹き付ける。焼けた生地から漂う卵と粉の香りよりはるかに強く、芳醇(ほうじゅん)な美酒の香りがあふれ出した。さらに、個包装して数日おくと生地がやわらかく、香りもマイルドになった。
こうして誕生した「酒かすマドレーヌ」は店頭に並べるとまたたく間に売れた。気が付くと原料の酒かすが底をつき、やむなく新酒が出回る時期だけの“幻の商品”となった。
しかし、「父の日にあの酒かすマドレーヌをもう一度売りたい」と思い、少量を工面してもらって再び販売すると、これがまた大好評。今年は何とかやり繰りをしてこの時期まで酒かすを温存している。
封を切った瞬間に立ちのぼる、ほんわかと心安らぐ酒かす独特の香りだけでもほろ酔い気分が楽しめる。焦がしバターと卵の風味、そして酒かすの香りが織りなす深みのある味わい。わずかに残る酒米が食感のアクセントとなっている。
新しい素材への挑戦を、「フランス菓子の基本」で臨んだ大川原さん。初心を忘れぬようにと、初めて勤務した店名を自分の店につけたというエピソードからも、彼のポリシーがうかがえる。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
【もうひとこと】
パウンドケーキやサブレになってもきっとおいしそう。そんな声がシェフに届くのを期待し、来季の店頭を楽しみにしています。
【住 所】交野市私部4の50の5
【電 話】072・892・1636
【営 業】午前10時~午後8時(月曜定休)
【最寄り駅】京阪電車交野市駅