【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.6.16朝刊)

菓子工房T.YOKOGAWAの「童子丸」

ベリーとチーズ 酸味爽やか

T.YOKOGAWA のオーナーパティシエ、横川哲也さん(47)は平成12年、宅地開発が進む和泉市に店を開いた。そこは横川さんにとって縁もゆかりも人脈もない未知の世界 だったが、無限の可能性を感じて選んだ。それから?年。「こうしてお店を続けられるのは、地元の皆さんが支援してくださるおかげ」。今では有名洋菓子店と して府内の広いエリアで知られている。

昨年、市の提案を受 けて地元の農産物を使ったスイーツを作り、地域活性化に一役買うことに―。「今度は皆さんに恩返しをする番なんです」。こうして市内の和洋菓子店と生産農 家がコラボレーションを図り、「大阪和泉スイーツ」が誕生した。本来なら有名な農産物があり、それをスイーツに仕立てるところだが、なかなか知名度が上が らない農産物をスイーツの力で世に送り出すのが和泉スタイルだ。

横川さんがコラボの “相手”に選んだのは、ベリー類。低農薬のイチゴとブルーベリーを一番おいしい旬に仕入れ、そのままコンフィチュール(ジャム)にして保存。これと、店で 一番人気のチーズケーキ「手のひら」をドッキングさせた。「どうせチャレンジするなら、一番の自信作で」。横川さんはこの地に最高の礼儀を尽くしたのだ。

キレのある酸味を引 き立てるのは、フランス産の濃厚なクリームチーズ。口解けがよいスフレタイプのチーズケーキの濃厚なコクをさっぱりと爽やかな風味のベリーが包み込んでい る。後から追いかけてくるのは鮮やかな酸味。この繰り返しでより深く、より濃く…。そしてそれが単調にならないのは、ベリーのプチプチッとした歯ざわり が、まどろみのようなとろける食感に心地よい刺激を与えてくれるからだろう。

「大阪和泉スイーツは、売り上げの3%を市に寄付し、子供たちが安心して生活できる街づくりに役立ててもらうことになっている」

菓子名の「童子丸」とは、平安時代の陰陽師(おんみょうじ)、安倍晴明(あべのせいめい)の幼名。千年も語り継がれる伝説のヒーローの名を冠したこの菓子が、プロジェクトに携わったみんなの願いをかなえ、時空を超えて未来に大きく羽ばたく様子を見守りたい。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

【もうひとこと】
たっぷりとフルーツの香りがいきています。チーズのコクも今までにない爽やかな味に。

【住  所】和泉市万町268の1
【電  話】0725・57・2888
【営  業】午前9時~午後8時
(毎月第3火曜定休、不定休日あり)
【最寄り駅】泉北高速鉄道和泉中央駅

産経関西 スイーツ物語 2012.6.17
msn産経ニュース 2012.6.24.10:30