【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.10.6朝刊)

お菓子のアトリエなかにしの「焼ドーナッツ」

安心素材で徹底した手作り

「お菓子との出会いは人との出会い」と語るのはオーナーシェフの中西伸吉さん(53)。大学を出て大手洋菓子メーカーに入り、営業職に就いていたが、あるとき先輩に勧められて製造部門に移った。

「教師志望だったので、子供に夢を与えるお菓子作りにやりがいを感じた」と中西さん。菓子作りの奥深さにのめり込んだ。その後、この会社を退職し、洋菓子店に勤めながら、休日を利用して他のあちこちの洋菓子店にも手伝いに入った。

「それぞれの店にオーナーのこだわりがあり、お菓子にも特徴がある、ということを惜しげもなく教えてくださった」。こうして自分の菓子作りへの考え方が明確になり、平成18年に自前の店を持つに至った。

こだわったのは「徹底した手作り」。全ての材料を一から作ること。「実家が農家だった縁で、新鮮で上質な農作物が手に入るルートを持っているんです。それで入手したものを菓子材料として年中使えるよう、ピューレやジャム、果実酒などにして保存しています」

添加物を使わない素材作りに努め、しかもそのシーズンの果物の出来栄えを加味して素材が最良の状態になるよう調整も怠らない。「昨日より今日、今 日より明日-。お客さまに喜んでいただけるように…」。その地道なスタイルで、地元客の信頼を得てリピーターを増やしていった。そんな安心の素材で作って いるのが「焼ドーナッツ」だ。

生地の甘味は三温糖と蜂蜜。これに白あんを入れることで、甘さを抑えてしっとり感を出している。白あんは蜂蜜と相性が良く、食感とともに味わいも引き立てる重要な素材だ。

季節ごとに変わるフィリング(具)も楽しみ。秋は「かぼちゃ」「鳴門のおいも」などが並ぶ。「かぼちゃ」は北海道産のエビスカボチャをシロップ煮 にして皮ごと刻んで入れている。徳島産の鳴門金時が入った「鳴門のおいも」は、口に入れるとふかしイモのようなふわっとした食感と子供の頃の記憶を呼び起 こす懐かしくて優しい味わいが広がる。

店には働きたい人が次々と集まり、求人を出したことがない。「中学校の課外体験学習で預かった生徒が大学生になってアルバイトに来てくれるんです」。自身 が多くのことを他店で学んだように、来る者は拒まず、丁寧に教える。中西さんが焼き上げる「ドーナッツ」の輪は、人と人とのつながりの和だ。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「焼ドーナッツ」は1個178円、9個入り1950円。この時期はプレーン、オレンジ、キャラメル、和栗、鳴門おいも、抹茶、チョコレート、かぼちゃの8種類

【もうひとこと】
フルーツ満載のショーケースは圧巻。店内で果物を販売することもあるそうです。

【住  所】大阪府池田市城南3の1の8
【電  話】072・750・1201
【営  業】午前10時~午後8時(不定休)
【最寄り駅】阪急宝塚線池田駅

msn産経ニュース 2012.10.6.10:30
産経関西 スイーツ物語 2012.9.29