コンペイトウ王国の「和三盆こんぺい」
ガリッはダメよ ゆっくりと舌で
おいしいからといって、なかなか満腹になるまで食べられないのがコンペイトウ。何と言っても原材料は砂糖のみ、砂糖の「塊」だ。戦国時代にポルトガ ルから伝来したお菓子だが、明治時代に保存が利く軍用の栄養補給食品として量産されるようになり、戦後の物資不足の混乱期に庶民のお菓子として復活した。
飽食の時代、このシンプルな砂糖菓子が並み居る強豪スイーツと肩を並べ続けているのには理由がある。「ただ甘いだけでは衰退していく。そこに付加価値を付 け、常に魅力的で楽しみのある商品でなければならない」と語るのは「コンペイトウ王国」を店舗展開する大阪糖菓の野村卓社長(64)。同社は創業70年、 数少ないコンペイトウ専門メーカーで、時代の変遷とともに斬新な商品開発を続けて生き残ってきた。
野村さんはコンペイトウの需要拡大のため自らが“伝道師”となり、本社や堺工場に開設した「コンペイトウミュージアム」でその歴史や製法について説明する。これが評判となり、多くのメディアに取り上げられ、「コンペイトウ」の名が多くの人々の記憶によみがえった。
コンペイトウは核となるグラニュー糖を直径1・8メートルの鉄釜に入れ、鉄釜を加熱しながら1分間に2回転させ、糖蜜をかけて徐々に形づくっていく。朝8 時から夕方5時までかかって、やっと1ミリ分大きくなるという。大輪と呼ばれる大粒の場合、完成まで2週間もかかるというから気の長い話である。
野村さんが和三盆に着目したのは5年ほど前のこと。黒糖コンペイトウの味にヒントを得て、徳島の和三盆を使うことを考えた。しかし、和三盆は粉状のため、 コンペイトウの核となる粒状の材料が手に入らなかった。そこで、粉を粒にする同社独自の技術を駆使し、和三盆の粉から粒を自社で作ることに成功した。
じっくり時間をかけて作られたコンペイトウは口の中でゆっくりと舌になじむ。ガリッとかみ砕きたくなる衝動を抑え、さらになめているとホロリッと溶けるよ うに砕ける。たちまち柔らかい和三盆の風味とともに甘味が広がる。小さな星形のコンペイトウの一粒一粒にシンプルかつ鮮明な和三盆の記憶が刻まれていく。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「和三盆こんぺい」は1袋473円
【もうひとこと】
「和三盆こんぺい」をおしゃれな小瓶に入れるととてもかわいらしく、来客用のコーヒーシュガーにぴったりです。
【住 所】大阪府八尾市若林町2の88
【電 話】072・948・1339
【営 業】午前9時~午後5時(土日祝日休業)
【最寄り駅】大阪市営地下鉄八尾南駅