【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2013.1.12朝刊)

パティスリー・ミィタンの「ブランデーケーキ」

子供の頃親しんだ味を

ミィタンはフランス語でハーフタイムの意味。大阪市西区の新しいスイーツの顔は、にぎやかな街や人に、ひとときの安らぎを与えてくれる。オーナー シェフの藤田茂さん(47)は数々のホテルを渡り歩いた後、ザ・リッツカールトン大阪のペストリー・ベーカリーシェフを務めた経歴を持つ超一流のパティシ エだ。

藤田さんのお菓子との出会いは、同時にパティシエとの出会いだった。「母がホテルプラザのパティシエと知り合いで、そのパティシエ がよくケーキを持ってきてくれたんです。その味と、その方に憧れ、高校を出て進路を決める頃には、ホテルシェフになる決意が固まっていました」

ホテルで大所帯を切り盛りしてきた藤田さんは、平成22年に独立し、あえて小さく店を構えた。組織や人事を意識することなく、自然体でお菓子に向き合いた い…。ミィタンのケーキは、豪奢(ごうしゃ)なものではなく、子供の頃に慣れ親しんだ味を今風にアレンジした“レトロモダン”が中心だ。30年近い経験で 蓄えたたくさんの引き出しの中から次々においしいお菓子を取り出し、今、見て食べておいしいお菓子に再生させている。

「ブランデーケー キ」は見た目はシンプルだが、店によって味が異なり、好みの分かれる難しいお菓子だ。焼き上げ後にブランデーを染み込ませるため、水分量の調節がポイン ト。藤田さんは生地に入れる粉を極限まで控え、しっかりと火を通して焼き上げている。強力粉を混ぜ合わせて生地が固く締まるのを抑え、水分を含んだ時、ほ どよくしっとりとして、かつ、ふんわり感を残すことに成功。また、バターと卵を完全に乳化させることで、味わい深く、軽い食感に仕上がっている。

ホテル時代からこだわりのバニラビーンズはタヒチ産。香りに薬品ぽいくせがなく、甘くマイルドなところがお気に入りだ。ヘネシー(ブランデー)の高級感あふれる香りは、1カ月ほど置くと、アルコールの強さが落ち着き、味に丸みがでる。

ジャンボ機からセスナへ乗り換えた藤田さん。次なる“ファーストクラス”のスイーツが楽しみだ

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「ブランデーケーキ」2千円

【もうひとこと】
ミィタンは藤田さんちの愛猫(あいびょう)の名前でもあるそうです。

【住  所】大阪市西区江戸堀3の1の20 Lois-Grand靱公園1階
【電  話】06・6447・0415
【営  業】午前10時~午後7時(水曜定休)
【最寄り駅】大阪市営地下鉄阿波座駅、京阪中之島駅

産経関西 スイーツ物語 2013.1.12