菓匠 香月の「餅パイ」
和菓子屋のこだわりパイ
寝屋川市の成田山不動尊の門前にある「菓匠 香月(こうげつ)」は昭和44年の創業。この年に誕生し、現在社長を務める2代目の中村誠二さん(43)は高校を卒業すると、泉州の有名菓子店「青木松風庵」で4年間修業し、店に入った。
工場が手狭になったため新しい店舗を探すことになり、中村さんは師匠である「青木松風庵」の青木啓一社長に相談した。青木社長は付近の地図を見て「これは 何や?」と、成田山不動尊を指した。中村さんが地元の有名な寺であることなどを説明すると、「それなら、ここを中心に物件を探しなさい」とアドバイス。門 前にあったせんべい店から好立地の物件を譲り受けて営業を始め、菓子を売り出したが、最初はお客さんから「せんべいないの?」の連続だったという。
「餅パイ」の販売を始めたのは7年ほど前。製法は青木社長に伝授された。パイ生地は144層の手織りで、生地の温度を芯まで一定にして薄く均一に伸ばすことにより、焼くとしっかり膨らみ、サクッとした食感が生まれる。
味の決め手は自家製のつぶ餡だ。北海道の襟裳(えりも)小豆を不純物の少ない白双糖(しろざらとう)で毎日炊き上げて使用している。「小豆の味を最もシン プルに引き出してくれる砂糖を選びました」と中村さん。和菓子屋のお菓子としてのこだわりがここにある。求肥(ぎゅうひ)餅の砂糖は控えめで、お餅に近い 味わいとやわらかさを保っている。
発売から約1年後、全国ネットのテレビ番組で紹介されたのを機に爆発的に売れ、対応に大わらわの日々が 続いた。「睡眠2時間くらいで頑張りましたが、仕事に集中できず、他の商品が作りきれなくなって。うちの商品は『餅パイ』だけじゃない、と1日の販売数 を限定しました」と中村さん。こうした英断もあって、「餅パイ」はロングランのヒット商品となる。
一時の売り上げに走らず、細く、長くの地道な選択が顧客の信頼度を上げる結果となったのだ。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「餅パイ」1本189円、5本945円
【もうひとこと】
見た目のボリューム感を大きく裏切られます。まるごと1本でも、おまんじゅう1個程度の感覚でいただけます。
【住 所】寝屋川市成田町22-2
【電 話】072・835・3971
【営 業】午前8時半~午後7時(月曜定休、月曜が祝日の場合は翌日)
【最寄り駅】京阪香里園駅から京阪バス成田山不動尊前バス停