【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2013.1.26朝刊)

ケーク・ド・コーキの「とろまーじゅ」

チーズの香りとコク楽しめる

「テレビドラマの和食の職人に憧れて調理専門学校に入りましたが、在学中のアルバイトは正反対のフランス料理店を選択。そこで初めて『シャルロット・オ・ポワール(洋梨のケーキ)』を食べて衝撃を受けました」

こう語るのは大阪・四天王寺にある「ケーク・ド・コーキ」のオーナーシェフ、池畠幸喜さん(51)。

卒業すると洋菓子界の重鎮・阿部忠二さんの店「芦屋ミッシェル」に入った。「料理にしとけ。お菓子はやめとけ」と勧められたが意志を貫いた。つらい修業を経て、ホテルプラザ、ホテルニューオータニ大阪と順風満帆のパティシエ道を歩んだのち、独立して店を持った。

街並みが気に入って決めた縁もゆかりもない四天王寺の地だったが、ひたむきなお菓子への思いとホテルで鍛えられた繊細な仕事ぶりが受け入れられ、街のスイーツ店として定着した。

人気商品の「とろまーじゅ」は、世の中に出回っているチーズケーキとは一味ちがう。研究を重ねた池畠さん。「生地の比重や焼き具合の調整が進むと好みの食感が出てきました。誰でも食べやすいものを作るのが目標でしたが、最後は自分がおいしいと感じる味を信じました」

チーズは香りが強く塩分が高いものと、淡泊だがコクの出るタイプをミックスし、食べ飽きない仕上がりに。チーズにあわせるのはメレンゲ。泡立て具 合で舌触りが大きく変わるため、細心の注意を払う。「お菓子作りの醍醐味(だいごみ)は結果として出てくることです。言い訳できないから面白いんです」と 池畠さん。

評判は上々で「ワインに合う」と男性客も増えた。ついには普通のチーズケーキをやめて、「とろまーじゅ」だけにした。

少し大きめなサイズも人気の秘訣(ひけつ)。ふわーっと軽い口どけの中からほんの少しひんやりとしたチーズのとろみが舌にからまる。チーズの香りとコクをじっくりと味わうための時間差攻撃が仕込まれている。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「とろまーじゅ」1個110円、6個入り660円、10個入り1100円

【もうひとこと】
水分を含ませたタオルを敷き、高温でしっかりと火を入れるそうです。フォークを入れると、中はとろっ。

【住  所】大阪市天王寺区上汐6-3-2-101
【電  話】06・6770・7120
【営  業】午前10時~午後8時(日曜と祝日は午後7時まで、不定休)
【最寄り駅】阪市営地下鉄四天王寺夕陽丘駅

msn産経ニュース 2013.1.26.19:00
産経関西 スイーツ物語 2013.1.26