むか新の「こがしバターケーキ」
和の『練り合わせ』が生んだ妙味
大胆に丸かじりすると、おいしさがわかるお菓子だ。ザクッと快い歯応えとともに、こがしバターの香りを一気に吸い込むと、生地が主体のプレーンなケーキが、表情豊かにきらめきはじめる。
むか新は創業120年を超え、大阪南部に16店舗を構える和菓子の老舗だが、平成8年に洋菓子ブランド「南蛮浪漫菓子SACCAI」を立ち上げた。洋菓子店で修行した常務の向井新将(しんすけ)さん(35)が中心となり、多くの人気商品を生み出している。
「こがしバターケーキ」はオーストリア人マイスターの指導のもとベテラン和菓子職人が14年に開発した。以後も改良を重ねて看板商品となり空港などで大阪土産として販売。22年から3年連続でモンドセレクション金賞に輝くなど、国際的にも評価が高い。
バターを銅釜で不純物を取り除きながらゆっくり熱した後、じっくり熟成。小麦粉に卵と生クリームなどを加え、そこにこの熟成させたこがしバターを合わせた生地を、直線10メートルの遠赤外線トンネルオーブンで焼く。
「生地の合わせ方が特徴です。洋菓子は生地を『混ぜ合わせる』と表現しますが、和菓子のように練り合わせているんです」と向井さん。これが生地に弾力を与え、しっかりとした歯応えとなる。口中ですぐに溶けてなくならず、ゆっくりと噛むほどに味が出る。
艶やかな表面のカリッとした食感は、職人が薄く手塗りしたフォンダン(砂糖のシロップ)によるもの。口中に緩やかにフォンダンが混ざり始めると、甘味が加わる。
120年の歴史が息づく和菓子屋ならではの製法が「こがしバターケーキ」に命を吹き込んだ。さらに進化させるため改良が重ねられている。「焼きたての食感 をいかに保つかが今後の課題。常に現在進行形です」。同じことを繰り返していては守れないのれんの重みに、向井さんは身を引き締めている。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「こがしバターケーキ」1個126円、6個入り840円、10個入り1365円
【もうひとこと】
今月29日に17店舗目が河内長野にオープンするそうです。
【住 所】泉佐野市羽倉崎1の4の7
【電 話】0120・41・0005
【営 業】午前9時~午後7時半(水曜定休)
【最寄り駅】南海羽倉崎駅