【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.6.29朝刊)

菓子工房 みわあおに五月台4丁目の「クッキー」

覚悟が作る究極の一品

大阪平野を一望する高台に店を構える「みわあおに五月台4丁目」。オーナシェフの三輪青丹さん(61)は、宝塚ホテル(兵庫県宝塚市)の製菓長を勤めた後、平成11年にこの地で開業した。

開業前には、同県西宮市の「ケーキハウスツマガリ」で研修を受けた。「いろいろなことを経験し、多大な影響を受けました」。中でもクッキーのおいしさに感銘を受け、「こんな風に焼き上げるにはどうしたらいいのか…」を自らの課題として研究を重ねたという。その結果、店頭には常時35種類以上のクッキーと焼き菓子が並んでいる。

バター、小麦粉、砂糖、卵。たった4つの素材で構成されるクッキーだが、配合や仕込みの組み合わせは無限だ。素材も多種多様で、例えば粉はフランス産のものや国産のもの、あるいはそれらをブレンドしたもの…。さらに、それに合わせて他の素材も調整するのだ。クッキーの焼成は、強火で一気に熱を入れるのがポイント。粉を少なくして生地やバター、ナッツ類の比率を上げ、火通りを良くしている。

楕円形(だえんけい)の「ノワゼット」は三輪さんがサクサクの歯ざわりと究極の軽やかさにこだわりぬいた末の到達点だ。「照明にかざすと、透けて見えるんです」。大小の粒のナッツが主体のクッキーは、固体としてギリギリの形状を保っている。

当然のことながら、それは製造過程やラッピング、そして店頭に並ぶ際に割れてロスになる率が高くなることを意味するが、しかしそれは覚悟の上である。

透けるほど薄い生地に歯を立てた瞬間、鼻腔を抜けていくヘーゼルナッツの生豆を思わせる青い香り。ギリギリに粉を抑えた生地はたちまち口中でほどけ、香ばしさだけを残して溶けていく。

究極の一品とも思える「ノワゼット」だが、三輪さんの視線はさらなるかなたを見据えている。

「学習に終わりはない」と三輪さん。師から学んだことを今、弟子たちに伝える日々だ。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
クッキー(63円~)。手に持たれているのは「ノワゼット」(2枚入り95円)

【もうひとこと】三輪さんのクッキーは全部オススメです。夏のギフトにぜひどうぞ。

菓子工房 みわあおに五月台4丁目
【住  所】兵庫県宝塚市中山五月台4の12の1
【電  話】0797・82・3070
【営  業】午前10時~午後7時(水曜定休)
【最寄り駅】阪急中山駅、山本駅

msn産経ニュース 2013.6.29 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.06.30 09:54