【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.7.27朝刊)

パティスリー・ガレットの「ひらのサブレ」

だんじりへの思い 地元土産に

大阪市平野区のパティスリー・ガレットのオーナーパティシエ、久保徹也さん(47)は大学卒業後、大手重工業企業に勤務したが、何年もかかる仕事のスケール感に違和感を覚えて退職。ホテル勤務の傍ら夜間の製菓専門学校で学び、学生時代からの憧れだったパティシエへと転身した。

父の経営する飲食店などに勤務した後、平成16年に地元で店を構えた。「最初は苦労しました。売れなくて夜12時まで店を開けていると、近所の人が来て、残っているケーキを全部買ってくれたこともありました」と振り返る。

久保さんは昨年、地元密着のお菓子を開発した。「パティシエ仲間のお菓子に、数年前から作りたいと思っていた軽い食感のサブレがありました。すぐに配合を教えてもらって、改良を重ねて完成しました」。常連客らの「平野のお土産を」の声に応え、「ひらのサブレ」と名付けた。

近くの杭全(くまた)神社は300年の歴史を誇る夏祭り(平野だんじり祭り)で有名。9町からだんじりが奉納されることにちなんで、9種類のフレーバーで味付けをした。

棒状に成型した生地を約6ミリにカット。シリコン型に入れて焼くので形状が均一化できる。生地を平釜に入れて低めの温度で20分程度焼く。中のフレーバーによって火どおりが変わるため、それぞれに調整が必要だ。

「黒ゴマ」「きな粉」「かぼちゃ」などの和素材に加え、スタッフからアイデアを募り、「ブラックペッパー」や「バジル」などお菓子には珍しい素材も加えた。斬新なフレーバーの選択がいかにも大阪人らしい。

発酵バターの風味豊かな生地に入っているのは、小麦粉と卵と砂糖と塩だけ。穀物飼料のみで飼育された鶏卵を使用するのは、卵特有の生臭さをお菓子に与えないための配慮だ。サクッサクッと心地よい食感とともに、素材を超える香味が押し寄せる。

正円の形状はだんじりの車輪でもあり、子供の頃、だんじり小屋を石蹴りをしながら回った思い出の石でもある。

1枚80円という手軽な価格も手伝って、発売当初から売れた。「毎日のように買いに来てくれるおばちゃんがいらっしゃいます」。久保さんを支えているのは、何といっても子供の頃からかわいがってくれるご近所さんたちだ。「ひらのサブレ」を自慢気にハンドバッグから取り出す地元のファンが後を絶たない。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「ひらのサブレ」1枚80円

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パティスリー・ガレット
【住  所】大阪市平野区平野本町5の14の17
【電  話】06・6796・6686
【営  業】午前9時半~午後8時(月曜定休)
【最寄り駅】大阪市営地下鉄谷町線平野駅

msn産経ニュース 2013.7.27 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.07.28 06:38